ニコすみ*フランス生活

日本で国際結婚し南フランスへ引っ越してきました

【フランス人の笑いを解説】皮肉ジョークって?知らないと誤解を生むユーモア

突然ですが皆さん、アメリカのコメディードラマを見て、

  • 何が面白いのか分からない
  • 顔も声のトーンも、言ってることも普通のことなのに、なぜか笑いが起きている

こんな経験はありませんか?

これはいわゆるアメリカンジョーク』といわれるもの。

 

アメリカンジョークは、社会状況や、共通認識として知られている事柄などの背景を理解していないと笑えないジョークだったり、日本でいう『言葉遊び』や『なぞなぞ』のように、少し頭を使って考えないとわからない笑いです。

 

ひねりのない単純な笑いを好む日本人には馴染みがなく、アメリカンジョークの面白さがわかるまで時間がかかってしまいます。

 

そして本題。フランスにも、日本とは違う笑いのスタイルがあるのです。

それは皮肉ジョーク

今回は、フランス人との会話で基本となる『皮肉ジョーク』についてご紹介します。

これを知らないと、フランス人を嫌な人だと誤解してしまったり、

あなた自身も「ユーモアのわからないつまらない人」と思われてしまいますよ…。

▼目次 ▼

 

フランス人がよく使う『皮肉ジョーク』って?

 

明らかに悪い結果に対して、『すごいね!』と言ったり、ミスをした人に、『完璧だね!』と逆のことを言ったりします。

そしてたいていの場合、日本のツッコミのように、声を張り上げたり、顔芸することなく、サラッと、通常のテンションのまま「皮肉ジョーク」を言うのです。

なので、皮肉ジョークに慣れていない日本人は、それがジョークだと分からず、言われた言葉の意味のまま受け取り、不快な気分になってしまったり、意味がわからず沈黙になってしまいます。

『皮肉=意地悪』ではない!

皮肉は『意地悪な言葉』と訳されることがありますが、フランス人にとって皮肉は『ユーモア』。

日常生活のあらゆる場面で『皮肉』が頻繁に使われ、いつもケラケラと笑っているのです。

もちろん、皮肉を言われた方も、傷ついてなんかいません。

むしろ、『面白いやつだな!突っ込んでくれてありがとう!』くらいに思っています。

 

特に、気の利いた皮肉、面白い皮肉、頭のいい皮肉、場を和ませる皮肉などが言える人は好まれますね。

逆に、皮肉のユーモアがわからない人は、『つまらない人』『頭の回転が悪い人』な印象を与えてしまいます。

 

フランスの『笑い』の種類

premier degré と second degré

フランスには『第1級の笑い(premier degré)』『第2級の笑い(second degré)』があります。

 

《第1級の笑い(premier degré)》

=言葉の意味そのままの笑い

※英語では to take something litterally などと言う

 

《第2級の笑い(second degré)》

=前後の背景を考慮し、言葉の裏の意味を読みとって面白みがわかる笑い

※英語では to look below the surface of something などと言う

 

例:変なことをしている人に対して

第1級の笑い=何それ!アホじゃん〜!→笑う

第2級の笑い=君の行動はいつも素晴らしいね!→笑う

 

日本人のユーモアは、第1級の笑いが多く、フランス人は第2級の笑いが多いです。

フランス人は、『皮肉を言おう!』『逆のことを言ってみよう!』と考えてこのようなジョークを言っているのではなく、自然に、会話の一部として、このような皮肉ジョークを頻繁に、日常的に使っています。

また、フランスだけでなく、アメリカなど欧米全般の国は、この第2級の笑いをよく使います。しかし、フランス人ほど、頻繁に、このようなジョークばかり言っている国はあまりありません。

 

ジョークを真に受けてしまう人に使えるフレーズ c’est du second degré

フランスには第2級の笑いが頻繁に使われるため、「c’est du second degré(それは第2級の笑い)」という表現があります。

もし、相手がジョークを真に受けてしまっていたら、「il faut le prendre au second degré 」(第2級の笑いとして受け止めなきゃダメだよ)と言います。

そして、いつも「それは第2級の笑いだよ〜」と教えてあげなきゃいけない真面目な人に対して、「il prend tout au premier degré」(彼はなんでも第1級の笑いで受け止めるね)と言ったりします。

 

風刺、ブラックジョーク

風刺・ブラックジョークとは、遠まわしに社会・人物の欠陥などを批評することをいい、これもフランスでよく使われます。

みんなが思っていることだからこそ、『そうそう!』と同調を得て、笑いに変わるのです。

 

しかし、中には限度を超えた風刺やブラックジョークも。

日本の新聞記事(2013年9月12日)

日本の新聞記事(2013年9月12日)

これは、2020年のオリンピックが東京で開催されることが決まった際、福島第1原発の事故が収束していない中、東京での五輪の開催は問題あることを指摘する意図があったとされるフランスの風刺画です。

実際に被災して苦しんでいる人がいる中、これはちょっと笑えないですよね。

しかし、必ずしもフランス人の全てが、このようなユーモアを面白く思っているのではありません。相手を傷つけたり、本気で怒らせてしまうようなレベルの低いユーモアには、フランス人同士でも批判があり、抗議されることもあります。

タチの悪いジョークを言われたら、指摘しよう!

フランス人との会話にユーモアは欠かせませんが、限度を超え、タチの悪いジョークを言われたら、ちゃんと指摘しましょう。

彼らは、相手を怒らせた時には必ず、「c’est du second degré(それは第2級の笑いだよ)」と言い、悪いジョークを言ったのにもかかわらず、相手に「ユーモアが分からないやつ」というレッテルを貼ります。

フランスでユーモアはとても大事にされているので、これを言われると大抵の場合、反発できません。

しかし、「あぁ、自分がユーモアセンスがないのか…」と思う必要は全くなく、むしろ、自分の意見をしっかり主張する、または、そのような人とは関わらないようにしましょう。

 

いかがでしたか?

私は個人的にフランス人のユーモアが好きです。

なぜなら、日本人では突っ込めないような事柄も、皮肉ジョークで笑いに変えてくれるからです。

限度を超えたブラックジョークは別ですが…

「受け入れる」

「引くわけでもなく、無理して合わせるわけでもなく、突っ込んで面白がる」そして、お互いありのままで、日常の些細なことを笑いながら楽しむ。それがフランス人のユーモアだと私は思います。

執筆: 2020年2月19日